子どもが有料アダルトサイトに課金!保護者の責任とは

「うちの子が、勝手に有料アダルトサイトに登録して請求が…」
「年齢確認って簡単に突破できてしまうものなの?」
スマートフォンの普及により、子どもたちがインターネットに触れるのが当たり前になった今、多くのご家庭でこのような悩みが深刻な問題となっています。
思春期の強い好奇心と、ワンクリックで何でもできてしまうデジタルの世界。その間で、保護者としてどう対応すれば良いのか、不安に感じている方も多いのではないでしょうか。
このレポートでは、そんな「未成年と有料アダルトサイト」の問題について、わかりやすく徹底解説していきます。
- 子どもがアダルトサイトを見たら、法律的に罰せられるのか?
- サイト運営会社は、どんな方法で年齢確認をしているのか?(そして、なぜ突破されるのか?)
- 万が一、子どもが課金してしまった場合、そのお金は返ってくるのか?
- 保護者として今すぐできる予防策と、トラブル発生時の正しい対処法
憶測や感情論ではなく、しっかりとした知識を身につけて、大切なお子さんをリスクから守りましょう。
1. 「うちの子、犯罪者?」法律のホントの話
まず、多くの保護者が一番心配される点からお話しします。子どもがアダルトサイトにアクセスしてしまったら、それは犯罪になるのでしょうか?
結論:子ども自身が罰せられることはありません
安心してください。未成年者が、成人向けの有料アダルトサイトを視聴しただけで、子ども自身が犯罪者として罰せられることはありません。日本の法律は、子どもを「加害者」として罰するのではなく、有害な情報から「保護されるべき対象」として捉えているからです。
法律が厳しく罰するのは、例えば児童ポルノを所持・提供したり、出会い系サイトで子どもを性犯罪に誘い込んだりするような、子どもを搾取する側の大人たちの行為です。
法律の目的は「罰」ではなく「予防」
この問題の中心にあるのは、「青少年インターネット環境整備法」という法律です。この法律の目的は、子どもを罰することではなく、子どもたちが有害な情報に触れる機会をできるだけ減らす環境を、社会全体で作ることにあります。
- 事業者(携帯会社など)の義務
携帯電話会社は、契約者が18歳未満の子どもである場合、原則として「フィルタリングサービス」を提供することが法律で義務付けられています。アダルトサイトのような「著しく性欲を興奮させ又は刺激する情報」は、このフィルタリングの対象です。 - 保護者の責務
同時に、法律は保護者に対しても「子どものインターネット利用状況をきちんと把握し、フィルタリングなどを活用して適切に管理してくださいね」と、その役割を明確に定めています。
つまり、法律は「子どもがアダルトサイトを見たら罰する」というアプローチではなく、「事業者と保護者が協力して、子どもがアクセスできないように事前に防ぎましょう」というスタンスなのです。
その結果、もし子どもが課金トラブルなどを起こしてしまった場合、それは警察が介入する「刑事事件」ではなく、お金の支払いや契約をどうするかという「民事上のトラブル(消費者トラブル)」として扱われることになります。この視点の違いが、後ほど解説する返金交渉などで非常に重要になってきます。
2. なぜ?サイトの「年齢確認」が簡単に突破されるカラクリ
「法律で規制されているのに、なぜうちの子は簡単にサイトに入れたの?」と疑問に思う方も多いでしょう。
ここでは、サイト運営者が設けている「デジタルな関所」である年齢確認システムの実態と、その抜け穴について見ていきましょう。
年齢確認システムの“ザルな”実態
多くのサイトで使われている年齢確認方法は、驚くほど単純です。
- 自己申告だけ
「あなたは18歳以上ですか? はい/いいえ」最もよく見かけるのが、このボタンをクリックさせるだけの方式です。これは実質的なブロック機能というより、「一応、確認はしましたよ」というサイト側の形式的なアリバイ作りのようなものです。サイトによっては、URLの末尾に特定の文字を追加するだけで認証をスルーできてしまうケースさえあります。 - アカウント設定に依存
楽天TVなどでは、アカウントに暗証番号を設定して成人向けコンテンツをロックできますが、子どもが親のアカウント情報(IDやパスワード)を知っていれば、簡単に解除できてしまいます。 - クレジットカード=成人という“思い込み”
多くのサイトでは、クレジットカードでの決済をもって「成人である」とみなしています。カードは原則、成人にしか発行されないためです。しかし、これは子どもが親のカードをこっそり使うという、最も多いケースを想定していません。またクレジッドカードと同様に利用できるデビットカードの存在も抜け穴を作っています。
ケーススタディ:大手サイト「FANZA」の二重構造システム
国内最大級のFANZAを例にとると、その巧妙な(そして問題のある)システムが見えてきます。
- クレジットカード決済は“顔パス”
FANZAでは、クレジットカードで決済する場合、それ以上の厳格な本人確認は求められません。カード情報さえ入力できれば、コンテンツが購入できてしまいます。これが、子どもによるアクセスの最大の抜け道となっています。 - その他の決済方法には“鉄壁の守り”
一方で、銀行振込や電子マネーなど、クレジットカード以外の方法で支払おうとすると、「eKYC」という非常に厳格な本人確認が必須となります。これは、スマホのカメラで運転免許証やマイナンバーカードといった公的証明書と、自分の顔写真を撮影して送るシステムで、未成年者が突破するのはほぼ不可能です。
新たな抜け穴「デビットカード」の存在
最近では、高校生でも持てるデビットカードが、この年齢確認をすり抜ける新たな手段になっています。
デビットカードは、使った瞬間に銀行口座からお金が引き落とされる仕組みで、クレジットカードのような審査が不要なため、15歳以上(中学生を除く)から作ることが可能です。
多くのサイトでは、デビットカードをクレジットカードと同じシステムで処理しているため、アダルトサイトでも問題なく決済できてしまう可能性が高いのです。※利用できないデビットカードもあります
なぜ、こんな“抜け穴”が存在するのか?
これは単なるシステムの欠陥ではありません。サイト運営者側の、計算されたビジネス判断と分析できます。
クレジットカードやデビットカードという最も一般的な決済方法に、eKYCのような面倒な手続きを導入すると、正規の成人ユーザーが「面倒くさい」と離れてしまい、売上が落ちてしまいます。
そこで、一部の決済方法には厳格なeKYCを導入して「法律は遵守しています」という姿勢を見せつつ、主要なカード決済では手続きを簡略化して利便性を優先する。
そして、万が一、未成年者が利用してトラブルになっても、その金銭的な責任は(後述するように)カードの名義人が負うことになる。
このように、事業者はリスクを巧みに保護者側へと転嫁しているのです。
表1:主要プラットフォームの年齢確認方法の比較
| プラットフォーム | クレジットカード・デビットカード決済時の確認方法 | その他決済時の確認方法 | 要求される書類・操作 | 主要な脆弱性 |
| FANZA | カード情報の入力 | eKYCによる厳格な本人確認 | マイナンバーカード、運転免許証等の公的書類と顔写真の提出 | 保護者のカード情報へのアクセス、未成年者本人のデビットカード利用 |
| 楽天TV | クレジットカード情報の入力 | (該当決済方法による) | アカウント内で設定された暗証番号の入力 | 保護者のアカウント情報(ID/パスワード/暗証番号)へのアクセス |
| 一般的なアダルトサイト | クレジットカード情報の入力 | (該当決済方法による) | 「18歳以上ですか?」のボタンクリック | 自己申告のみであり、実質的な障壁がない |
お金は戻る?保護者の「最強の武器」と「落とし穴」
子どもが決済してしまった後、最も気になるのは「支払ってしまったお金は取り返せるのか?」という点でしょう。ここには、保護者にとって非常に強力な権利と、同時に注意すべき大きな落とし穴が存在します。
落とし穴:カード会社への支払いは拒否しにくい
まず知っておくべきなのは、親のクレジットカードが使われた場合、カード会社からの請求を拒否するのは難しいという現実です。
ここで登場するのが、「善良な管理者としての注意義務」(善管注意義務)という、少し難しい法律用語です。
これは簡単に言うと、「クレジットカードは、持ち主が責任を持ってしっかり管理してくださいね」というカード会社とのお約束のことです。子どもが親のカードを使った場合、カード会社は「第三者による盗難」ではなく、「親の管理不足」と判断することが多いのです。
その結果、たとえ親が許可していなくても、カードの不正利用補償の対象外となり、支払いを求められるのが一般的です。
保護者の最強の武器:「未成年者取消権」
保護者には、民法で「未成年者取消権」という非常に強力な権利が認められています。
これは、「未成年者(18歳未満)が、親の同意なしに行った契約は、後から取り消すことができる」というルールです。この権利は、子ども自身が契約したデビットカードでの決済にも、もちろん適用されます。
契約が取り消されると、その契約は最初からなかったことになります。つまり、支払ってしまったお金は全額返金を請求でき、まだ支払っていなければ支払う必要はありません。これは、デジタルコンテンツの購入にも適用される、消費者を守るための非常に強力な武器です。
「ウソをついたんだからダメ」は通用する?:「詐術」の例外
この未成年者取消権には、一つだけ例外があります。それは、未成年者が「詐術(さじゅつ)」を使った場合です。これは、相手を騙して自分を大人だと信じ込ませるような、積極的なウソをついた場合を指します。
しかし、法的に「詐術」と認められるハードルは非常に高いです。消費者センターなどの見解では、単に年齢確認画面で「はい」をクリックしたり、利用規約に同意したりするだけでは、「詐術」には当たらないとされています。
- 「詐術」に当たらないとされる例
- 「成年ですか?」という問いに「はい」とクリックしただけ
- 親のアカウントを使い、年齢確認で「20歳以上」を選んだ
- 利用規約の同意チェックボックスをクリックした
- 「詐術」に当たる可能性がある例
- 偽造した身分証明書を提出した
- 年齢を聞かれて、口頭やチャットで具体的なウソの年齢を答えた
サイト側が用意したボタンをクリックしたり、フォームにただ入力するだけでは、通常「詐術」とは認められません。
問題の核心:2つの「法律関係」のねじれ
ここで保護者が直面する問題の核心が見えてきます。それは、「親 vs カード会社」と「子ども vs サイト運営者」という、2つの独立した法律関係がねじれている点です。
- 親はカード会社に支払う義務がある(善管注意義務違反のため)。
- しかし、サイト運営者との契約は取り消せる(未成年者取消権のため)。
この結果、保護者はまずカード会社への支払いを済ませた上で、別途、自らサイト運営者と交渉し、「未成年者取消権」を主張して返金を求めなければならない、という二重の苦労を強いられることになるのです。これが、このトラブルの最も厄介な構造です。
表2:未成年者のオンライン契約に関する法原則
| 未成年者取消権 | 「詐術」による例外 |
| 定義: 未成年者が親の同意なく結んだ契約を取り消せる権利。 | 定義: 未成年者が、自分を成人と信じさせるなど、積極的なウソをついて契約した場合。 |
| 法的根拠: 民法第5条。 | 法的根拠: 民法第21条。 |
| 誰が行使できる?: 未成年者本人、または親。 | 詐術になる行為: 身分証の偽造など、積極的で意図的なウソ。 |
| 効果: 契約は無効になり、支払ったお金は全額返金される。 | 詐術にならない行為: 単純なボタンクリックや、利用規約への同意チェック。 |
| ポイント: オンラインでの購入にも適用される。 | 結果: 詐術が認められると、未成年者取消権は使えなくなる。 |
親としてどう動く?「予防」と「対処」の実践ガイド
これまでの分析を踏まえ、最後に保護者が取るべき具体的な行動を「予防策」と「問題が起きた後の対処法」に分けてご紹介します。
1. トラブルを未然に防ぐ!家庭でできる予防策
法律で定められた保護者の責務は、具体的な行動に移すことが大切です。
- テクノロジーを味方につける
携帯会社が提供するフィルタリングサービスや、スマホのOSに標準で入っているペアレンタルコントロール機能を必ず設定しましょう。有害サイトへのアクセスやアプリ内課金を物理的にブロックするのが最も効果的です。子どもの成長に合わせて設定を見直すことも忘れずに。 - 家庭のルールを一緒に作る
「課金するときは必ず相談する」など、明確で守りやすいルールを子どもと一緒に決めましょう。ルールを破ったときのペナルティも事前に話し合っておくと良いでしょう。 - お金とカードの管理を徹底する
保護者自身のクレジットカードやデビットカードの管理は非常に重要です。共有パソコンのブラウザにカード情報を保存しない、セキュリティコードは教えない、といった基本を徹底してください。 - オープンな対話を心がける
思春期は好奇心旺盛で、親から自立したい気持ちが強くなる時期です。この心理を理解し、頭ごなしに禁止するのではなく、「なぜこのルールが必要なのか」を冷静に話し合い、インターネットの危険性について一緒に学ぶ姿勢が、長い目で見れば最も効果的な予防策となります。
2. もしもの時の対処法:冷静に行動するための5ステップ
その有料アダルトサイトが嘘の登録完了で詐欺の場合は、誤って対処してしまうことが重大なリスクを生みますので、正規の有料アダルトサイトかどうか、今一度確認してください。
万が一、子どもが無断で決済をしてしまったら、慌てず、以下の手順で冷静に対応しましょう。
- ステップ1:事実確認
まずは、サイト名、決済日時、金額、使われたカード情報などを正確に把握します。そして、子どもを叱りつけるのではなく、なぜ利用したのか、経緯を冷静に聞き取ることが重要です。 - ステップ2:サイト運営者へ連絡
すぐにサイトのカスタマーサポートに連絡します。その際、感情的に訴えるのではなく、**「未成年者が親の同意なく契約したため、民法第5条に基づき未成年者取消権を行使します」**と、法的な権利を使う意思を明確に伝えましょう。 - ステップ3:書面で通知する
電話やメールで相手が応じない場合は、内容証明郵便など記録が残る方法で正式な取消通知書を送ります。書き方が分からなければ、消費者センターのウェブサイトなどで文例を参考にできます。 - ステップ4:カード会社・銀行へ連絡
サイトとの交渉と並行して、決済に使われたカード会社や銀行にも連絡し、「この請求は現在、サイト運営者と紛争中です」と伝えておきましょう。 - ステップ5:専門家を頼る
当事者だけでの解決が難しい場合は、迷わず専門機関に相談してください。最も頼りになるのは、お住まいの地域の消費生活センターです。電話番号「188」(いやや!)にかければ、最寄りの窓口を案内してくれます。相談員が事業者との間に入って交渉(あっせん)もしてくれます。それでも解決しない場合は、弁護士への相談も検討しましょう。
まとめ
この記事のポイント
- 法律
子どもがアダルトサイトを見ても犯罪にはなりません。法律は「罰」より「予防」を重視しています。 - サイトの実態
年齢確認は、クレジットカードやデビットカードを使えば簡単に突破できる「二重構造」になっていることが多く、そのリスクは保護者に転嫁されています。 - リスクの本質
最大のリスクは刑事罰ではなく、金銭トラブルです。カード会社への支払い義務と、サイトへの返金請求権という「ねじれ」が問題を複雑にしています。 - 対抗策
保護者には「未成年者取消権」という強力な武器があります。この権利を正しく理解し、冷静に行使することが解決の鍵です。
保護者の皆さんへ
未成年と有料アダルトサイトの問題は、テクノロジーの活用と、親子の対話という二つのアプローチが不可欠です。フィルタリングを設定し、家庭のルールを作るという予防策を講じることは、保護者の大切な責任です。
そして、万が一トラブルが起きてしまった際には、法的に与えられた権利を武器に、冷静かつ毅然と行動してください。
この二つの姿勢を両立させることが、デジタル時代において子どもを守り、家庭を守るための最も確かな道筋となるでしょう。











